鋳造・鍛造の違いと加工における留意点
金属部品を製造する代表的な方法として「鋳造」と「鍛造」があります。いずれも歴史のある加工方法で、自動車・産業機械・航空機など幅広い分野で活用されています。しかし、両者は製造プロセスも得意とする形状や特性も大きく異なり、その後に行う機械加工においても留意点が変わってきます。本記事では、鋳造と鍛造の定義と特徴、用途、メリットと注意点、精度を高める工夫、発注時のチェックポイント、そして相双地域の対応企業について整理します。
■ 鋳造と鍛造とは
- 鋳造(Casting)
溶かした金属を鋳型に流し込み、冷却・凝固させて形をつくる方法。複雑な形状や大型部品を一体で製造できるのが特徴。 - 鍛造(Forging)
金属を加熱または常温で塑性変形させ、ハンマーやプレスで成形する方法。内部組織が締まり、強度や靭性に優れる。
このように、鋳造は「自由な形状」を得意とし、鍛造は「強度が必要な部品」に向いていると言えます。
■ 適用できる分野と用途
鋳造と鍛造は、用途によって使い分けられています。
- 鋳造品の代表例
- エンジンブロック、シリンダーヘッド
- ポンプ・バルブ部品
- 複雑形状の産業機械部品
- 鍛造品の代表例
- クランクシャフト、ギア、コンロッド
- 高圧容器用部品
- 航空機・建設機械の高強度部品
鋳造は「複雑形状や大型一体品」、鍛造は「高強度・高耐久性が必要な部品」に使われるのが一般的です。
■ メリットと注意点
両者の利点とリスクを整理すると次のようになります。
- 鋳造のメリット
- 複雑形状を一体で製作可能
- 大型部品や中空形状にも対応できる
- 型を流用すれば同形状を繰り返し製作できる
- 鋳造の注意点
- 気泡や巣などの内部欠陥が発生するリスク
- 機械的強度は鍛造に比べて劣る
- 後加工で寸法精度を確保する必要がある
- 鍛造のメリット
- 金属組織が緻密になり、強度・靭性が向上
- 衝撃や疲労に強く、信頼性の高い部品が得られる
- 歩留まりが高く、材料特性を活かせる
- 鍛造の注意点
- 複雑形状や薄肉品には不向き
- 金型コストが高く、初期投資が大きい
- 加熱や加工により寸法精度のばらつきが発生する
■ 精度を高めるための工夫
鋳造・鍛造部品はいずれも後工程の機械加工で精度を確保するのが一般的です。
- 鋳造品の場合
- X線検査や超音波検査で内部欠陥を確認
- 機械加工で仕上げ寸法を確保
- 熱処理で組織を安定させ、強度を改善
- 鍛造品の場合
- 金型設計を最適化し、寸法誤差を最小化
- トリミング・ショットブラストで不要部分を除去
- 熱処理により靭性・耐摩耗性を向上
- 機械加工で最終公差を確保
■ 発注者が押さえるべきポイント
外注時には、以下の情報を事前に明示しておくことが重要です。
- 材質(鉄・アルミ・銅合金など)
- 形状と用途(複雑形状か、高強度品か)
- 精度要求(寸法公差、強度、表面仕上げ)
- 数量とコスト(試作か量産か)
- 後工程の有無(熱処理・機械加工・表面処理の要否)
これらを整理しておくことで、鋳造・鍛造いずれの工法を選択すべきか、発注先とスムーズに検討できます。
■ 相双地域にも鋳造・鍛造に対応できる企業が多数存在
相双地域には、鋳造・鍛造の両工法に対応できる企業が揃っています。自動車・産業機械向け部品の実績を持ち、熱処理や機械加工まで一貫対応できる工場も少なくありません。特に、鋳造では複雑形状の産業部品や大物部品に強みを持つ企業、鍛造では高強度部品や精密鍛造品に対応可能な企業があり、発注者にとって信頼性の高い調達先となっています。さらに、地域内には品質保証体制が整った企業も多く、非破壊検査やトレーサビリティ管理により、高い信頼性を求められる分野にも対応可能です。