溶接・溶着の基礎と種類|金属・樹脂の接合技術と発注時のポイント
溶接・溶着は、金属や樹脂を接合して一体化する加工技術です。構造物や部品を強固に結合できるため、製缶・鉄骨・車両・機械・電子機器などあらゆる分野で用いられています。金属を高温で溶かして接合する「溶接」と、樹脂を熱・圧力・超音波などで接着する「溶着」は、素材や用途によって異なる技術体系を持ちます。強度・気密性・見た目などの品質要件に応じた方法選定が重要です。
■ 溶接・溶着とは
溶接とは、金属同士を加熱または圧力により融合させる接合方法です。主な方式には、アーク溶接(TIG・MIG・MAG)、スポット溶接、レーザー溶接などがあります。一方の溶着は、樹脂を熱や振動エネルギーで軟化させ、分子レベルで結合させる技術で、超音波溶着、熱板溶着、レーザー溶着などが代表的です。いずれも、ネジやリベットを使わず軽量かつ高強度な接合を実現できる点が特徴です。
■ 適用できる部品と用途
溶接・溶着は、構造材から精密部品まで、幅広い製品に適用されます。
- 金属溶接:鉄骨フレーム、製缶構造物、配管、機械フレーム、車両部品
- 樹脂溶着:自動車内装部品、タンク、電子機器ハウジング、医療容器
- 特殊用途:アルミやステンレスの薄板溶接、異種金属接合、気密容器の封止
特に自動車分野では、金属構造部に溶接、樹脂部品に溶着を使い分けるなど、素材特性を活かしたハイブリッド構造が主流となっています。
■ メリットと注意点
溶接・溶着のメリットは、部品を一体化できるため、強度・剛性を高めながら軽量化が図れる点です。また、ボルトなどの締結材が不要で、外観も滑らかに仕上げられます。気密性や防水性を確保しやすい点も特長です。
一方で、加熱によるひずみ・変形・残留応力が発生する場合があり、後工程での修正が必要になることもあります。特に薄板や異種材の溶接では、熱影響部の品質管理が重要です。溶着の場合も、溶融温度や圧力条件のばらつきが外観不良や強度低下につながります。
■ 加工精度を高めるための工夫
高精度な溶接・溶着を実現するには、適切な熱管理と治具設計が欠かせません。金属溶接では、溶接電流・速度・シールドガス流量などの条件を最適化し、ひずみやスパッタを抑制します。自動溶接機やロボット溶接を導入することで、溶接品質の安定化と作業効率向上が図れます。樹脂溶着では、溶着圧力・温度・時間を精密に制御し、接合面を清浄化することで強度を確保します。近年ではレーザー溶着や超音波制御技術による精密接合も普及しています。
■ 発注者が押さえるべきポイント
溶接・溶着を外注する際は、素材の種類(鉄・アルミ・ステンレス・樹脂など)、板厚、溶接部の長さ・形状、強度要求、気密・外観条件を明確に伝えることが重要です。図面には、溶接部位と溶接記号(JIS Z3021などに準拠)を正確に記載しましょう。特に構造物や圧力容器の場合は、溶接検査(非破壊検査、外観検査)の要否も指定します。樹脂溶着では、材料の組み合わせや溶着方式(超音波・熱板・レーザーなど)を事前に共有しておくと良いでしょう。
■ 相双地域にも溶接・溶着を行う企業が多数存在
相双地域には、アーク溶接・TIG溶接・レーザー溶接など幅広い設備を備えた企業が多く、製缶構造物から精密フレーム、ステンレス配管まで対応できます。また、樹脂溶着機を用いて自動車・電子機器分野の樹脂部品を製造する企業も増えています。熟練技能者による手溶接と、自動機による高精度溶接の両立が可能な企業が多く、試作から量産まで柔軟に対応する地域ネットワークが形成されています。
